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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

2022年に購入した洋書について(古書編)

 

新刊書に続いて古書編も。こちらは個々の本についてもう少し詳しく書いておく。

購入冊数:11冊

・John Dollond    A Gentleman Hangs

色々な意味で、今年最大の当たり。M・Kさんが『ある中毒患者の告白』で読みやすさ・総合点ともに高く評価しているにもかかわらず、作品・作者とも情報が一切ネットに出てこない謎の本(バーザン&テイラーが高評価しているらしいと後で知った)。森英俊さんの書庫で見かけて「持っている人は持っているものだなあ」と感心していたが、長年の探索が実りついに発見しました。いかにも知られざる珍本らしく、送料込み10ドルで入手できたのが面白いでしょう。英米のマニアたちを出し抜き、やったやった!と欣喜雀躍してfacebookで自慢しても全く反応がなかったのがいい思い出w

・Jonathan Stagge    The Scarlet Circle【ペーパーバック版】

今年の神保町の洋書まつりでは正直得るものがなかったのだが、その二週間ほど前に羊頭のペーパーバック棚でこれを抜いたために歯車がずれたのではないかと思っている。電子書籍でも買ったが、再三ツイッターで書いたようにこの電子書籍版は極めて質が悪い(誤字脱字が多数)ので、紙版を確保する意義は大きい。

・Henry Wade    Lonely Magdalen【ペーパーバック版】
・Curtis Evans    The Spectrum of English Murder

ヘンリー・ウェイド作品はそのほとんどが電子書籍化されていて入手容易な状況だが、マーティン・エドワーズが絶賛するこの中期作だけはなぜか電子書籍版が存在しない。元版の、特に「改訂前」の戦前版は超入手困難(オークションで三桁後半ポンドで落札されたのを見たことがある)だが、10年ほど前に出たペーパーバック版は、奥付的には戦前版のテキストを使用しているとのこと。真偽を確かめるべくエヴァンズのウェイドについての評論書を購入したのだが……後に小林晋さんが本人に確認したところ、戦前版は未読・改訂内容はノーチェック、という事実が明らかになった。

・W. F. Harvey    The Beast with Five Fingers

British Library Crime Classicsの新刊で出たThe Mysterious Mr. Badmanの解説でエドワーズが、「ハーヴェイの没後に出た短編集The Arm of Mrs. Eganはミステリ作品集として秀逸」と書いていたのを見て読みたくなって購入。この、10数年前にでた新しい傑作選は今出ているハーヴェイの本の中ではおそらく最も充実した内容で、上の短編集の収録作もすべて採録。面白い作品があればRe-ClaMなどで紹介したいと考えている。

・Anita Boutell    Death Has a Past
・Anita Boutell    Death Has a Storke/Cradle in Fear
・J. de N. Kennedy    Crime in Reverse
・Leonard O. Mosley    So I Killed Her

マーティン・エドワーズThe Life of Crimeに登場、その紹介があまりにも面白そうだったので買ってしまった本たち。このうちでは特にアニータ・バウテルが興味深々な作家で、Death Has a Pastはパット・マガーに先行する「誰が誰を殺したか分からない」ままプロットが進んでいく話らしい。ケネディやモズリーといった作家は、バークリーの後から出てきてシニカルな作品をいくつか書いた「性格悪の悪童たち」とのこと。

・Donald Henderson    Mr. Bowling Buys a Newspaper
・Ellen Nehr    Doubleday Crime Club Compendium 1928-1991

自分への誕生日プレゼントのつもりで買った本。ヘンダーソンは翻訳希望の作品で、電子書籍も再発された紙版の本も確保済みだが、あくまで原テキストを求めて購入。エレン・ネールはアメリカの「ダブルデイ・クライム・クラブ」の情報を集約した極太本。去年買ったThe Hooded Gunman(「コリンズ・クライム・クラブ」の極太本)と対になる本で、買えてよかった。値段的には今年買った本で一番高い本(送料込み120ドルくらい)。超円安になる前に買ってしまってよかった~。