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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

本を読んだら書く日記20181108|フリン・ベリー『レイチェルが死んでから』

そう毎日、猟奇の鉄人師父のような面白古本日記が書ける訳ではないのである。

体調不良につき定時で上がる。にも拘わらず、一応古本屋はチェックせずにいられない悲しきSAGA(丁度今ネトフリでBAKIのSAGA編やってますね、ノッブ熱演)。

フレドリック・ブラウン『宇宙の一匹狼』(創元SF文庫)\108

ブラウンはあんまり読んでない。SF、しかも長編に至ってはまったくのゼロなので、とりあえず押さえておく。オススメあったら教えてください。

古本は買ったものの、体調不良は変わらず。結局9時半過ぎには寝落ちするも、5時間後(2時半)に目が覚めてしまい体力のなさを自覚(普段2時に寝て7時に起きるスケジュール通りともいえる)。もう一回寝て5時に目が覚めたので、ちょいちょい本を読んだ。ある意味、こういう超朝型生活もいいものかもしらん。早く出て一駅歩いたりとか、夕ご飯を作って冷蔵庫に入れてから出かけるとか……

 

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フリン・ベリー『レイチェルが死んでから』(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読んだ。

おお、2019年の新刊期間は既に始まっているのである。「本が出てすぐ読めば、9月10月に積み残しで絶望することもない」と毎年言いっているが、計画的に読めたためしがない。今年は何とかしたいところだが如何に。

おおまかなあらすじはこんな感じ。看護師をしている姉レイチェルの家にやってきたガーデンデザイナーのノーラは、喉を掻き切られて殺された姉の死体を発見する。警察が捜査を進めていく中で、レイチェルは自分を15年前に襲った男を追い続けていたことが明らかになる。果たして殺人犯は「この男」なのか、あるいは……

といっても、あらすじを説明することに意味はあまりない。この小説は、ノーラの捉えどころのない語りにそのほとんどを拠っている。彼女の内面が現実に(それさえも彼女の認知の歪みが見られる)、あるいは過去が現在に、シームレスに喰いつかれる不安定なナラティヴは読者にも不愉快な読書体験を約束する。「レイチェルならこうした」「レイチェルが生きていればああだった」と、一人語り続けるノーラは、陰惨な暴力事件の新聞記事を集めてはレイチェルに語り聞かせるのが習慣で、また二人はよく法廷に出かけては、暴力事件の審理を傍聴していたとか……こういった(同情の余地はあるが正直悪趣味な)点も含めて、正直読み進めるのはかなりきつい。終盤、ある人物と話をしたことをきっかけに物語は大きく動き始める。一応伏線回収らしきものが行われ、そして彼女は終幕へと転落していくのであった。ちゃんちゃん。

アメリカの作家がイギリスを舞台に展開した物語だが、50年代・60年代のドメスティックでニューロティックなサスペンス小説の香りを濃厚に漂わせている(例を挙げれば、マーガレット・ミラー、あるいはシーリア・フレムリンなど)。ギリアン・フリンポーラ・ホーキンズなど最近流行りの「ガールもの」と似ているようで、笑いのない陰鬱な作風は興味深い(個人的にはゴーン・ガールはギャグ)。評価については、今後の作品を読んでみないと何とも。

さて、書いた通り本作はアメリカの作家がイギリス、しかもオックスフォード州の少し田舎を舞台に展開した作品だが、「テムズ・ヴァレー署」「ジェリコ街」「ルイス部長刑事(ただし若くて黒人)」などなど、コリン・デクスターの「モース主任警部」シリーズを思わせるフレーズがぎっしり詰め込まれている。これはあからさまに意図的な仕込みだと思う。ドラマファンなのかな。一気に親近感が湧きました。

2017年度エドガー賞処女長編賞受賞作とのことだが、個人的には候補作のビル・ビバリー『東の果て、夜へ』(ハヤカワ・ミステリ文庫)の方が好きかな。まあ、この辺は好みです。

 

レイチェルが死んでから (ハヤカワ・ミステリ文庫)

レイチェルが死んでから (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

東の果て、夜へ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

東の果て、夜へ (ハヤカワ・ミステリ文庫)