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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

本を読んだら書く日記20181107|連城三紀彦『もうひとつの恋文』

本を読んだ日には日記を書くことにしようと思った。

今日は休みだったので、先日自宅の一部を整理(整頓はまだできてない)した時に出た本をブックオフに売りに行くことにした。120冊となると移動するだけでもなかなか骨である。先日「買取10%アップクーポン」を貰ったので、電車とバスを乗り継いで普段あまり行かない荻窪ブックオフに行った。店頭でクーポンを出した瞬間、ある致命的な勘違いに気が付く。「CD・DVD・ゲームソフト買取10%アップ」……今日は本しか持ってきてないです……一回休み。結果、5冊は買取不可だったが、8000円程度になった。買取方式がバーコード読取式になってから、全体的に金額が上がっているような?という疑惑がまた裏付けられてしまった。その店で、一冊購入。

戸田義長『恋牡丹』創元推理文庫)\460

一週間前に出た本を半額で買うのもなんだなあと思いつつ、まあこういう機会でもなければ買わないだろうということで良しとする。

せっかく荻窪に来たので、南口側の古本屋ゾーンもチェックする。ささまは店内を模様替えしてからあまりそそられるものが出ていなかったのだが、今日はハヤカワ文庫の古い装丁のカーが増えていて微笑ましい気持ちになった。店外の均一から三冊。

S・S・ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』創元推理文庫)\108

パット・マガー『七人のおば』創元推理文庫)\108

石神茉莉『謝肉祭の王』講談社ノベルス)\108

先日神保町の古本まつりで買った野崎六助『北米探偵小説論』をぱら読みしているとヴァン・ダインが読みたくなるのである。多分実家にはあるけど、取りに行くのが面倒なので。マガーは(『不条理な殺人』が新刊で出るので)布教用。今週末の千葉読書会で、未読者がいたら押しつけよう。石神茉莉は誰かが探していたような。マケプレは馬鹿馬鹿しい値段になってますね。kindleがあるのに。

その後、西荻窪に移動して盛林堂書房でRe-ClaMの打ち合わせ。今日は使う紙を選ぶために印刷業者の営業の人と話をした。なるほどこれはネット入稿の印刷会社が相手だと味わえない楽しみだ。

帰りは途中まで電車に乗ったものの、何駅かで降りて結局家まで歩いてしまった。30分くらい歩いたので良しとしよう。家に帰ってから図書館まで本を返しにまた十数分歩く。だんだんお腹がすいてきたので、近くの松屋でチゲ鍋定職を食べてしまった。豆腐が美味しい。

 

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連城三紀彦『もうひとつの恋文』新潮文庫)を読んだ。

連城は積み残しが非常に多いので、機を得ては減らしていく必要がある。今回の本は、連城三紀彦全作品ガイド』でも「ミステリ的趣向は薄まっており、ちょっとひねった恋愛小説と言った方が良いだろう」とある通り、ミステリとして読むという意識はむしろ邪魔になるかもしれない。以下各編感想。

・「手枕下げて」:男女の機微をまるで理解していない間抜けな主人公の周りに浮遊する女性たちの心情を描くような描かないような。正直不出来な作品。

・「僕ンちの兎クン」:突然非行に走った「いい子」の息子の謎に困惑する父親の話。情報を出し入れする順番によってはミステリになったかもしれない。

・「紙の灰皿」:女子大生が50絡みの元作詞家を世話する話。こんな女子大生がいれば人生明るそうである。べたべたした語り口には閉口する。

・「もうひとつの恋文」:突然「お前の妻に惚れた」とラブレターを託される夫の話。「一人の女をめぐる二人の男の話」というテンプレートに一枚カードを増やすことで構図が反転する。動機の「気持ち悪さ」(作られた美しさ)も含めてなるほど連城。

・「タンデムシート」:突然転がり込んできた元夫を三ヶ月間泊めてしまう夫に困惑する妻の話。結末は異なるものの、正直「もうひとつの恋文」と同工異曲で、連続で読むには厳しい。

「もうひとつの恋文」「タンデムシート」の二作からは、二人の男の間にある断ち切るに断ち切れない、友情とも違う何かがほの見えた(ミスリードですらないのだが)。後年の作品の萌芽として考えても面白いかもしれない。

 

もうひとつの恋文 (新潮文庫)

もうひとつの恋文 (新潮文庫)