購書読書日記(20180501)
最近腰が痛いような気がして家の近くの整骨院を訪れるも、激混みとかで予約を入れるに留まる。整骨院なんて初めて来たので、勝手も相場もまったく分からない。お財布にいくらくらいお金を入れていけばいいのやら。
ついでに近くの古本屋を見る。古本の強者がたまに大当たりを引いているらしいのだが、自分はその域に達していないためかこれはという本を買ったことはない。均一棚から短編集を二冊。
・森村誠一『溯死水系』(光文社文庫)\108
・森村誠一『空洞の怨恨』(光文社文庫)\108
「森村誠一ベストセレクション」全七巻から二冊。装丁が格好いいので揃えてみようかな。
最近、陳舜臣やクロフツを固め読みしているが、これは完全な逃避。読みやすくかつ一定以上面白いのが約束されている作家の作品は大変ありがたい。先週来こんな本を読んでいる。
・陳舜臣『青玉獅子香炉』(文春文庫)
・F・W・クロフツ『フレンチ警部とチェインの謎』(創元推理文庫)
この中では、短編集『青玉獅子香炉』の表題作(直木賞受賞作)が一番素晴らしかった。公の歴史の裏面に隠されたもう一つの中国史。連綿と描かれる玉を愛し玉に愛された男の執念、ジワリと燃え上がる情熱が、贋作をして真作を凌駕せしめる逆転の一瞬(それはすなわち稗史が正史を超えていく瞬間でもあり……)へと到達する感動の中編。これが今他で読めないのは少しもったいない。
クロフツはどれを読んでも面白いが、『二つの密室』はやや異色に見えて王道を行く物語。田舎のお屋敷に潜り込んだ貧乏ながらハツラツとした女アンが出会う最悪の運命は、フレンチ警部の出馬へと繋がっていく。フレンチの前に立ち塞がる二つの密室、丹念な捜査の末に明らかになる真実は……と言った話。トリック自体は初級というか拍子抜けな内容だが、それらも含めてすべてが伏線となっており、最後にピタリと平仄を合わせて意外な犯人へと到達するので文句はない。作品の構成自体も、フレンチの捜査パートの明晰さと比べるとアンの語り・認識の危うさが浮き彫りになるように仕込まれており、それがラストまで繋がっているのは非常に上手い。おすすめ。