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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

本を読んだら書く日記20190404

この形式も久々な気がする。とはいえ、読んだ作品の出来はいまみっつくらい。

 

ラグナル・ヨナソン『白夜の警官』(小学館文庫) 評価:③

白夜の警官 (小学館文庫)

白夜の警官 (小学館文庫)

 

アリ・ソウルシリーズ(正確には「ダーク・アイスランド・サーガ」)第二作。日本での翻訳は三作目。最初に言っておきたいのだが、第五作『極夜の警官』と一文字しか違わないタイトルは、検索性も悪くてノーセンスである。

まあ、それはさて措こう。第一作『雪盲』のラストで医師見習いの彼女と別れたアリ=ソウルは、アイスランド北部の小さな町シグルフィヨルズルでまだ警官を続けていた。ある日、トンネル工事業者の男が頭を殴られて殺されているのが発見され、署長のトーマスは彼を捜査に同道させる。留守番を仰せつかった先輩のフリーヌルはなぜか気もそぞろでやる気を失っているようにみえた……

良くも悪くも詰め込みすぎ、というのが読後の印象。ミステリとしてのプロットの基本線は、①「アリ=ソウルの捜査」、②「なぜかこの事件に積極的に関わってくるジャーナリストの取材」が徐々に漸近していくところにある。それぞれに見えること見えないこと(それは視点人物の確証バイアスに基づくもの)を書き分け散らしていくことで、読者を誤導する技法を駆使しようとした痕跡は見える。しかし、アリ=ソウルは恋々と別れた彼女のことばかり考えていて使えない(第五作では子供こしらえてたし、復縁したんすかね)し、ジャーナリスト女史は意外に客観的で有能なので視点がぶれず、全然技法が生きてない。だめじゃん。

その上にトーマスの問題、フリーヌルの問題、被害者の殺される理由……ともりもりに盛っているので、総合的に薄味になってしまっている。テーマは十のうち三つくらいに絞ってその三つをしっかり書き込んでくれればもっといい作品になったのにねえ。惜しい。

 

イ・ドゥオン『あの子はもういない』(文藝春秋) 評価:③

あの子はもういない

あの子はもういない

 

華文ミステリの次は韓国ミステリが流行るんですかね。(いまいち興味なし)

下品かつ悪趣味なスリラー小説。どこから取り出したかも知れないどす黒い感情を、作中人物がこれでもかと投げつけあうのを読んでいるだけで気分が悪くなる。ある点についてミスディレクションが結構上手に使われているのでそこだけを抜き出して評価することもできるかもしれないが、生理的にダメでした。韓国の映画って全然見たことないんですけどこんな感じのが多いんですか? じゃあ私はだめだなあ。

 

(評価は5点満点です)