2018年翻訳ミステリ約ベスト10(今さら)
諸人もすなる年間ベスト10晒しなるものを我もしてみむとてするなり。
大まかに10日ほど遅れてするあたりに、時代とのずれを感じます。国内については碌に記録もしていないので、翻訳ミステリのみとなりました。お許しください。(期間は2017年11月から2018年10月)
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2位:アン・クリーヴス『空の幻像』(創元推理文庫)
3位:クリス・ウィタカー『消えた子供』(集英社文庫)
4位:ラグナル・ヨナソン『極夜の警官』(小学館文庫)
5位:ハリー・カーマイケル『アリバイ』(論創海外ミステリ)
6位:J・D・パーカー『悪の猿』(ハーパー・ブックス)
7位:デレク・B・ミラー『砂漠の空から冷凍チキン』(集英社文庫)
8位:デイヴィッド・C・テイラー『ニューヨーク1954』(ハヤカワ文庫NV)
9位:ヘレン・マクロイ『牧神の影』(ちくま文庫)
10位:ヨート&ローセンフェルト『犯罪心理捜査官セバスチャン 少女』(創元推理文庫)
次点:エイドリアン・マッキンティ『サイレンズ・イン・ザ・ストリート』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
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■各作品コメント
・『贖い主』:シミルボンにも以前感想を書いたが、現代北欧ミステリを代表するシリーズの最新邦訳作(かつ個人的にはシリーズ最高傑作)ということもあり、正直もっと評価されてほしい。
・『空の幻像』:正直、第四作『青雷の光る秋』の最悪の終わり方からここまで再生できるとは思っていなかった。二重のクローズドサークル、伝承と現代性を重ね合わせた構成。現代英国ミステリの最高峰。
・『消えた子供』:小さなコミュニティの中で一つずつ積み重ねたエピソードを終盤一気に収束させる構成の上手さと、誰一人ありきたりでない登場人物を操り切った新人離れした実力はもっと評価されるべき。
・『極夜の警官』:雰囲気のある舞台と選り抜きの登場人物によって、読者にアイスランドの小さな港町に降り積もった歴史と、その意外な現代性を思い描かせる秀作。3月に発売という第三作にも期待。
・『アリバイ』:丁寧に形作られた謎が丁寧に解きほぐされる、序盤中盤終盤まるで隙のないウェルメイドな捜査小説。売り方が不愛想すぎるのが残念。
・『悪の猿』:ありがちな「物語」を共有する他の凡作と比べて遥かに優れているのは、提示されるヴィジョンの細やかさ。才能は細部に発揮される。
・『砂漠の空から冷凍チキン』:不器用すぎる男の友情物語。こればっかりは好みなので、無理に理解していただく必要はありません。
・『ニューヨーク1954』:50年代のニューヨークの夜に佇む闇と、その匂い・空気を再現しようとした意欲作。続編があればぜひ読みたい。
・『牧神の影』:暗号については全く興味がないが、40年代アメリカの、しかも片田舎でなければ逆に成立しない仕掛けには惹かれるものがある。
・『犯罪心理捜査官セバスチャン 少女』:第二作以降で読むのをやめてしまった知り合いが多いようで残念。骨太な構造とセンチメンタルなおっさんの好対照が生きる良品。
・『サイレンズ・イン・ザ・ストリート』:第一作で失敗した部分をもう一度見直して再構築したのであろう良作。世間では第一作ほど読まれていないらしいが……
■総評
結果的に年末ランキングとは無縁な内容になりました。