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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

(第27回文学フリマ東京で)何が始まるんです? 第三次大戦だ。

前略

 三門のTwitterをご覧の方はとっくにご存知かと思いますが、11/25(日)に実施される第27回文学フリマ東京に出展します。スペースは2階のキ-27「Re-ClaM編集部」でお待ちしております。

 さて、昨年11月のアントニイ・バークリー書評集」完結以降約一年、「企画に熱がない」「やる気が見受けられない」「お為ごかしでは?」「そもそも同人でやるというのが間違っている」と各方面より熱い励ましのお言葉をいただきつつも、(権利関係が怪しい)短編ミステリの翻訳を行ってまいりましたが、今回久々にガチ企画を引っ提げての参戦となりました。(長編ミステリの翻訳をお待ちの方がいたらごめんなさい、もう少し時間がかかりそうです)

 クラシックミステリ翻訳の歴史についてある程度承知している方であれば、伝説の同人誌「ROM」のことも当然ご存知でしょう。現在のクラシックミステリ業界の論客を多く育み、また様々な企画の出発点となってきたこの同人誌が、144巻+2巻をもってついに40年の歴史に幕を下ろすことになりました(「ROM-s 002」は本年11月に刊行予定です)。

 その精神を受け継ぐ形で創刊されるのが、今回の「Re-ClaM」となります(要出典)。「Re-ClaM」は「Rediscovery of Classic Mystery」の略で、それとなく「ROM」(Revisit Old Mysteries)を感じさせる名称になっています。「原書レビューを中心に」という点は(いまのところ)変わりませんが、よりラディカルによりバイオレンスによりアナーキーに私がやりたいことをやる冊子になっていくことでしょう。

 その第一号では、先日『探偵小説の黄金時代』(2015、森英俊白須清美訳、国書刊行会)が翻訳されて話題沸騰中のマーティン・エドワーズを特集します。

 そもそも、本書が翻訳されるまで(あるいはエドガー賞他各賞を受賞するまで)日本のほとんどのミステリファンがエドワーズのことを知らなかったのがおかしいんです。兼業作家でありながら、毎年一冊ずつ欠かさず長編を出し、アンソロジーを中心に短編を60編ほど発表し、(CWAの委託で)自分でもアンソロジーを編纂し、大英図書館と協力してクラシックミステリを復刻し……と着々と積み重ねた実績により、ついにCWAの会長とディテクション・クラブの会長を兼任するに至った……こんな作家、史上他にいません。なんで誰も彼のことを知らなかったのか?なんで誰も紹介しなかったのか?

 「こんなの絶対おかしいよ」と吠えても過去は覆りません。今ここにいない誰かに責任を問うても意味はありません。ならばせめて今からでもきちんと紹介したい、という趣旨で始まった特集ですが、存外しっかりしたものになってしまいました。当初はペラペラの本になる予定だったのですが、特集パートだけで60ページ越えというね……第二号以降が貧弱に見えないか、今から心配です。

 以下目次。

 創刊の辞(三門優祐)
 海外古典推理小説の愉しみ(須川毅・同人誌「ROM」事務局)
◆【特集】知られざるマーティン・エドワーズ
 マーティン・エドワーズ氏への十の質問
 マーティン・エドワーズ氏ご紹介(三門優祐)
 マーティン・エドワーズ氏の印象(芦辺拓
 『探偵小説の黄金時代』 もう一つの訳者あとがき(白須清美
 いざ、謎解きの旅へ ~『探偵小説の黄金時代』訳者解題(森英俊
 [レビュー] Martin Edwards Yesterday's Papers (1994)(三門優祐)
 [レビュー] Martin Edwards Gallows Court (2018)(三門優祐)
 [翻訳評論] Martin Edwards The Story of Classic Crime in 100 Books 序文(三門優祐 訳)
 [レビュー] Martin Edwards The Story of Classic Crime in 100 Books (2017)(三門優祐)
 マーティン・エドワーズ作品リスト
 [レビュー] Lois Austen-Leigh The Incredible Crime (1931)(小林晋)
 [レビュー] J. Jefferson Farjeon Seven Dead (1939) (小林晋)
 [レビュー] John Bude The Cheltenham Square Murder (1937) (小林晋)
 ブリティッシュ・ライブラリー・クライム・クラシックス 全リスト
 英米クラシックミステリ復刻最新事情(三門優祐)
■連載&寄稿
 小野家由佳のCHEEP BEER
 -第1 回 マックス・アラン・コリンズ Bait Money (1981)(小野家由佳)
 不思議な既視感~M・D・ポースト「神のみわざ」を読んで(井戸本也玄)
 偽・黒後家蜘蛛の会「バークリーとチョコレート講座」(kashiba@猟奇の鉄人)
 「ヒラヤマ探偵文庫」について(平山雄一

 史上初のインタビュー(一問一答のメールインタビューなのが残念)、プロ作家によるエッセイ、『探偵小説の黄金時代』訳者コンビによる「もう一つのあとがき」原書レビュー7本(うち2本がエドワーズの長編)、評論の翻訳(エージェント通して許諾取りました、海外送金が手間でした)、あとあまりの作業量に編集氏が死んだリスト集ともりもりの特集に加えて、ヤングもベテランも入り乱れる寄稿ページの贅沢なこと。ははは、やったもん勝ちですわ。とまれ、『探偵小説の黄金時代』を読んだ読者に向けての副読本的な位置づけで作っておりますので、濃いクラシックミステリファンの方からよく知らないけどなんとなく気になるというフレッシュな方までぜひお求めください。

 最後に頒布について。「Re-ClaM」第一号は、100ページで末端価格1000円となります。お隣の「書肆盛林堂」(キ-25~26)は、180ページの「大阪圭吉単行本未収録短編集1」をなんと1500円(文字通りの価格破壊、買わなきゃ損)で頒布されるとのことですが、そこを見た後お越しいただくくらいが丁度いいのではないかなと。さらに、逆隣のキ-28では、親切にも本誌に寄稿してくれた小野家由佳氏主催のサークル「シマダ商事」「季刊島田商事」という謎の冊子を出すらしい(文フリ東京で出していくなら「隔季刊」になるのではないかというツッコミは野暮なのか?)ので、こちらも併せてぜひお買い求めください。なお、「Re-ClaM」は盛林堂書房/書肆盛林堂での委託を予定しておりますので、当日お越しいただけない方も手軽にゲット可能です。

 本誌見本については、今後少しずつアップロードしていく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

三門優祐 拝

 

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