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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

社畜読書日録20170618(弘前旅情編②)


飲んで運動(徒歩)して疲れて寝て、起きたらもう朝ごはんの時間だったのでさっさと詰め込む。リンゴジュースが美味しかった(小並感)。
越前先生の講演会という選択肢もあったが、前日の古本屋チェックの際に、弘前駅の東側にブックオフが二軒あるのを見おぼえていた私は、無意識のうちに歩きだしていた。
正直なところ、レンタカーを借りてぐるっとブックオフを回り、然る後に青森駅まで車を転がすというルートが色々な意味で楽だった(弘前駅での電車待ちがない、とか)だろうと後知恵は出てくるが、その時は歩くことしか思いつかなかったのだった。アホですね~。結局いい天気の弘前駅の周りを、汗を流しながら7~8kmは歩いたのではないかと思う。成果としては、以下の通り。クレイスはマケプレ価がとんでもないことになっているシリーズ第一作。後輩に約束しているクレイスセットに追加できてよかった。

ロバート・クレイス『モンキーズ・レインコート』(新潮文庫)¥108
井沢元彦五つの首』(講談社文庫)¥108
佐野洋平凡な人の平凡な犯罪』(文春文庫)¥108

その後青森駅近くの謎のピラミッド「アスパム」でお土産を買いつつ、林語堂というなかなか大きな古書店にも入ってみたが、特に買うものはなし。

お土産を買うために時間を変えた帰りの新幹線の席が、越前先生の斜め前だったのには正直今回の旅行での一番の驚きでした。

 

帰りの新幹線ではマーガレット・ミラー『これよりさき怪物領域』(ハヤカワ・ミステリ)を読んだ。絶対に間違いのない本を読みたかったのだ。今となってはマケプレ価が高い高い。あらすじ感想は以下。

カリフォルニアのオズボーン農場から若き主ロバートの行方が知れなくなってからもう7か月が経つ。残された血痕や血の付いたナイフから、彼は死んでいるのではないかと考えられていたが、死体は見つからない。妻のデヴォンは、彼の死亡認定を受けるため裁判所に訴えを起こす。ロバートの人となりを、いなくなったあの日の出来事を口々に証言する人々。しかしその証言の中であぶり出されたロバートの姿は、事件の意味を少しずつ書き変えていき……

もはやここにはいない人」についての謎を描いた作品である。これはマーガレット・ミラーの描く物語としては特別目新しいものはない。しかし、淡々と証言が積み重ねられ、アクションもなければ探偵が皆を集めての大団円も行なわれない、ハヤカワ・ミステリの判型でわずかに200ページにも満たないこの作品は、人がある瞬間に「怪物領域」に入ってしまってもはや戻れないこと、その恐怖を/絶望を/そしてある意味での救済を読者にしっかりと刻み込んでしまう、一片の贅肉も持たない傑作である。

「ブルボンウィスキー(バーボン)」「手袋入れ(グラヴボックス)」など、今となっては古めかしい表現がかなりの頻度で登場するのにはいささか閉口した。改訳の上復刊文庫化(短編を追加してページ数を整えてもいい)といった機会を、どこかの出版社が掴んでくれないものか、と一応希望のみ述べておく。