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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

社畜読書日録20170605-0606

またしばらく失踪してしまった。特に書くことがなかったとか言わない。

昨日から今日にかけて一気に古本を買ったので一応メモしておく。

佐野洋婦人科選手』(講談社文庫)\108
佐野洋空翔ける娼婦』(文春文庫)\108
佐野洋殺人書簡集』(徳間文庫)\108
笹沢左保溺れる女』(光文社文庫)\108
笹沢左保闇にもつれる』(祥伝社ノン・ポシェット)\108
dF・W・クロフツ二つの密室』(創元推理文庫・新装版)\108

エラリー・クイーンフランス白粉の秘密』(角川文庫)\108
dロバート・クレイス『ぬきさしならない依頼』(扶桑社ミステリー)\108
dロバート・クレイス『死者の河を渉る』(扶桑社ミステリー)\108
佐野洋歩き出した人形』(集英社文庫)\108
笹沢左保悪魔の部屋』(光文社文庫)\108
dデイヴィッド・ベニオフ99999』(新潮文庫)\108
dジョージ・P・ペレケーノス『硝煙に消える』(ハヤカワ・ミステリ文庫)\108
dジョージ・P・ペレケーノス『友と別れた冬』(ハヤカワ・ミステリ文庫)\108
dジョージ・P・ペレケーノス『俺たちの日』(ハヤカワ・ミステリ文庫)\108
ハリイ・ケメルマン『土曜日ラビは空腹だった』(ハヤカワ・ミステリ文庫)\108

なぜ取りつかれたように佐野洋笹沢左保を買っているのかは自分でもよく分からない。佐野洋は未読の短編集が小山になっているのでそのうち何冊か読んでみたい。クレイスとペレケーノスは布教用。男たちの友情物語なので、絶対好きな人はいると思う。『99999』も人に薦めたいので買い直した。デイヴィッド・ベニオフは『卵をめぐる祖父の戦争』だけの作家ではないのだ。『卵をめぐる祖父の戦争』もまた、ぜひとも布教したい作品である。ビブリオバトルにも強そう(それはどうでもいい)。

エラリー・クイーン国名シリーズ再読も順次。読書会までに全作はとても無理だが、可能な範囲で進めたいところ。『オランダ靴の秘密』については、穴だらけの論拠でクイーンのロジックの薄い部分を弄りまわしてみた。(http://fusetter.com/tw/tKKGp#myself)ネタばれしかないので、未読の方は注意です。
今日は『ギリシア棺の秘密』を読み終わったが、クイーン二人が物語にいかに「ケレン」を持ちこんで、なおかつ自分たちの作風を壊さないように工夫していくその過程を改めて見直すことができた。『ギリシア棺』の場合、それは「若きエラリーの推理が必ずしも当を射ない」ことを活用して物語にうねりを作ろうとする姿勢そのものを指す。詳細はまたふせったーで書くかもしれません。次は多分『シャム双子の秘密』を読むはず。なぜ順番がバラバラかというと全部の本が手元にある訳ではないから。中古で何とか揃えたいんですけどね。全く見かけないのはなぜなのだろう。

んで、昨日買った笹沢左保『闇にもつれる』(祥伝社ノン・ポシェット)を漫然と読んだ。60年代の短編5編と80年代の短編2編を単行本から再録した、特段コンセプトもない作品集だが、個々の作品のクオリティは結構高い。ところで、この本を読んでいる時、ふと西澤保彦のことを考えた。笹沢左保が西澤に影響を与えているかどうかの評論って見たことがないと思うんですが、どこかにありますかね。閑話休題、以下ミニコメ。

「貰った女」:夫との間に子供が出来ず精子提供を受けて息子を産んだ女性が、「息子の父親」に当たる提供者への妄念に憑かれていく。終盤、異様に熱狂的な雰囲気がくるりと反転して、アッと言う間もなく幕が下りてしまう。読者の「期待」を巧みに操る好編。

「寒い過去の十字架」:水商売の女が住まわせている男は数年前に強盗傷害未遂で逮捕されていた。執行猶予が消えようとする今、近所で強盗傷害事件が発生した。果たして犯人は? 人それぞれに心に「虚無」を抱えて生きていることを描く。出来は普通。

「愛する流れの中に」:愛人に殴る蹴るの暴行を受け、気を失った女。目を覚ました彼女は愛人の用心棒に連れられるまま軽井沢の別荘地へと逃避行を図る。多くを語らない男が「理由」を一言告げて去った瞬間の女の心情の描き方が上手い。何が救いかなんてそれこそ人それぞれなのだ。

「闇にもつれる」:人気のない夜道で性的な暴行を受けた女性が、突然現れた目撃者によって人生を狂わされてしまう。表題作。読んでいてまったく不愉快な話なのだが、闇の中でもつれた因果を光の下に引きずり出す手際の巧みさ、タイミングの的確さで読ませる。

「帰らざる雲」:軽井沢の別荘地で雷に打たれて感電死した男。その死の真相を知る者はただ一人。本書にも何度も登場する類の因縁話だが、特に面白いところはない。軽井沢、良く出てきますね。

「消滅」:山陰の片田舎の旅館で働く無口な芸者の運命的出会いを描く短い作品。虚無を満たしてくれる人間がこの世界のどこかにいると信じなければやって行かれない……的な話で陳腐だが、それでもなおしっかり読ませるのは細かい描写の良さだろうか。

「都会の断絶」:先日愛人に捨てられた女が、バーで出会った美しい女に抱いた嫉妬は容易く殺意へと昇華される。50年前の作品ではあるが、まったく現代でも通用するイヤ~な小噺。

闇にもつれる (ノン・ポシェット)

闇にもつれる (ノン・ポシェット)