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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

社畜読書日録20170530

飽きずに紀伊國屋書店に通う私。
「ぼくのかんがえたさいきょうのミステリ作家(仮)フェア」を実見した。まっ、いいんじゃねぇの?別にどうでもいいんだが、こういうフェアで選書する時にいわゆる本格ミステリがほとんどで、また翻訳ミステリがさっぱり入らない辺りに何らかの限界を感じる。あと、フェアの内容をまとめたペーパー的なものが見当たらなかったのが残念。

もう今月買うものはない、と言いつつ見落としていた本を買う。

スキップ・ホランズワース『ミッドナイト・アサシン』(二見書房)\2,700

1885年のオースティンで殺人を繰り返したアメリカ史上初の連続殺人鬼についてのノンフィクション。殺人そのものだけでなく、それが触媒となって起こった狂乱についても書いているらしく興味深い。ニューヨークタイムスの書評(https://goo.gl/Rtz0XY)で触れられている、エリック・ラーソン悪魔と博覧会』(文藝春秋)も読んでみたくなる。

 

さて、今日読んだ本。G・K・チェスタトン『詩人と狂人たち』創元推理文庫)。新訳で一応新刊扱い。昨日がチェスタトンの誕生日ということで、積んでいた本をなんとなく読み始めた。
チェスタトンは正直あまり読めていない。ブラウン神父物は一通り読んでいるはずだが、『ポンド氏の逆説』『奇商クラブ』『四人の申し分なき重罪人』『新ナポレオン奇譚』など、未読だらけ(論創の本はすべて読んでいるというねじれもあり)。本作も今回が初読。
「平凡人」の目線から見れば狂い捻じれた思考、目にも止まらぬ瑣事が、あえて“逆立ち”できる「詩人」の言葉によって解かれる。その最も分かりやすい(決して分かりやすくはない)例が「鱶の影」。「足跡のない殺人」へのアプローチとして、まるで意想外のところから入って異形の論理を抜けて意外にエレガントな出口に転がり出る面白さは追随を許さない。
また、「ガブリエル・ゲイルの犯罪」は、人がどのようにして「平凡人」からはみ出して「狂人」となるかを、「観念の犯罪」の理解者ガブリエル・ゲイルの思考に寄り添う形で描く雄編。作品集のベスト1と言って間違いないでしょう。傑作。 

詩人と狂人たち (創元推理文庫)

詩人と狂人たち (創元推理文庫)