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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

社畜読書日録20170529

早速ネタ切れの感あり。この手の日記は、毎日書く気力もさることながら書くネタを探す努力・日常をエンタメにしていく精神なくしては続かぬことを痛感する。

 

来月の新刊ネタは31日に回すとして、さて今日のこと。日頃なく真面目に働いたので、かつやの期間限定の青ネギ山椒カツ丼が美味しかった(ただし味が濃い)くらいしか記憶がない……なんだこれは、たまげたなぁ。
帰りがけに新宿紀伊國屋書店本店を覗く。と言って、先日行ったばかりで買う本がある訳もないので即退出。「ぼくのかんがえたさいきょうのミステリ作家(仮)フェア」という頭の悪い(誉め言葉)名前のフェアを見たかったのだが、見つからず(後で一階でやっていることが判明)。ついでに『バイオーグ・トリニティ』を求めてコミック棟を彷徨うも在庫見当たらず。すぐ横のアニメイトで結局買う。ミス連で大学生に薦められて今更読み始めたが、大変素晴らしい作品で舞城ミステリやってますという感じ。詳しいレビューはまた別途。さらに隣のブックオフで「安く買ってすまない」顔で新刊落ちを買う。

アンソニーホロヴィッツ007 逆襲のトリガー』(KADOKAWA)\1410
オーガスト・ダーレスソーラー・ポンズの事件簿』(創元推理文庫)\108

ホロヴィッツシャーロック・ホームズものの『絹の家』『モリアーティ』で「原作愛+現代の読者も引っ張り回すセンス」を見せつけてきた作家なので、きっと楽しめることでしょう。ただし、当方「007」には興味なし。ディーヴァーの『白紙委任』も結局読まなかったんだよね。
シャーロック・ホームズのライヴァル」は未所持が多いので、これを機に集め始めてみようか(均一棚縛り)。

 

さて読書感想。今日は、ジャック・ヴァンススペース・オペラ
どう考えても「宇宙(スペース)で、歌劇(オペラ)だ!」というダジャレから生み出された連作短編集(に限りなく近い長編)。
宇宙探偵マグナス・リドルフ』しかり、『天界の眼』しかり、「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」に収録された作品群は「ペテン師まかり通る」小説ばかりだが、本書も実質そのジャンルと言える。惑星ルナールから「第九歌劇団」を連れてきた(が、その行方を見失ってしまった)アドルフ・ゴンダー、あるいは当初は「音楽で異星人と情緒を共有することなど不可能」「『第九歌劇団』はフェイク」と言っていたにも関わらず、金が絡むや即デイム・イザベルの顧問に収まったバーナード・ビッケルなど、調子がいいにもほどがある彼らはまさにヴァンス・ワールドの(ちょっと間抜けな)ペテン師たちである。一見アドバンテージを握っている彼らが、結局(志だけは高い)デイム・イザベルに引きずり回されてしまうのは滑稽だ。なおかつ、その甥のロジャー・ウールや歌劇団のメンバーたちが巻き込まれるドタバタ騒ぎ、異星人たちの独特かつ作りこまれた描写は高レベルであり、同時に簡単に枠に収まらない独自性を保っており、これぞヴァンスだ、という所感。密航者である魅惑の美女マドック・ロズウィンを巡る全宇宙規模の謎も魅力的。選集の掉尾を飾るにふさわしい良作といえるだろう。大変おすすめ。
同時収録の中短編4編はいずれも面白いが、個人的には「海への贈り物」が白眉。異星に作られた、貴金属を収集する基地から乗組員が失踪するホラーから、異星知性体とのコミュニケーションを目指すSF、そして真実を暴き悪党へと迫るミステリ(しかも最後はちょっと泣ける)と、多様なエンタメ要素を惜しみなく注ぎ込んだ秀作だった。 

スペース・オペラ (ジャック・ヴァンス・トレジャリー)

スペース・オペラ (ジャック・ヴァンス・トレジャリー)