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三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

社畜読書日録20170527

ツイッターだと残らない日録的なものを書いてみようかと思った。今回は果たして何日続くか。

折角の休みだが、出かける気力がまるでないのは人として終わっている。どうせ明日は朝早くから出勤だし、飲みに行くのも億劫だ。そういうことでその辺にある読みかけ本を片端から読んでみる。『ローマ帽子の秘密』(読書会用)、『スタイルズ荘の怪事件』(読書会用)と、結局読書会用の本しか読んではいないのだが。クイーンについては、弘前読書会のために『中途の家』を読むことになっているので、それまでに国名シリーズを全作読み返そうかな、とふと思った。それにしても、なぜ角川は電子版を取り下げてしまったんだろう。
冷蔵庫に何もないので晩御飯の買い物に行くついでにポストを見たら献本あり。

dジャック・ヴァンススペース・オペラ』(国書刊行会)(←白石朗様、ありがとうございます!)

d、つまりダブりだ。昨日会社帰りに買ったの……落ち込んでも仕方がないので、そのうち若い衆に布教する。本当に布教したい「魔王子シリーズ」はあまりにも見ないのが残念。

 

読書感想がメインコンテンツのはずなので、エラリー・クイーン『ローマ帽子の秘密』(角川文庫)をば。
新訳国名シリーズ第一作。クイーンは好きな作家だが、多くの作品が中学生の時に読んで、それ以来一度も再読していない。このローマも未再読組の一冊。「初期クイーンは面白くない」という話がツイッターで回ってきたが、果たして本当にそうだったか自信がなく、口を挿めなかったというのが今回の再読の発端。
で、実際に読んでみると、いくつか気づきがあった。
まず捜査を描く際のテンポの良さ。ローマ劇場で毒殺死体が転がる発端から、「警察到着、クイーン警視到着、エラリー到着、現場調査、関係者尋問……」と流れるように捜査が進行する。途中、帽子についての議論などを挿むなど、単調にならないようにポイントを押さえたストーリーは、優れた訳文も相まってすらすら読める。「情報を①集めて②整理して③評価して、次の捜査へ進む」流れができているので読みやすい。クイーン警視の捜査とエラリーの論理が両輪となり、「劇場内から帽子を持ち出すことができる人間は論理的に考えて一人しかおらず、その人が犯人であるのは間違いない」という結論に持ち込むのも好手。「読者への挑戦」に堪えうるものを用意したという気概もよし。
退屈することはないが……それでもなお面白くはない(十分面白い、という読者がいるのは分かるが)。
色々理由はつけられるが、エラリーが覚えていた以上に画面から不在であるとか、論理的には正しいが「被恐喝者」という以上には真犯人に描写がなく、逆に意外性が損なわれているとか、特殊な毒を使う犯人側のメリットが皆無(作品の要請上特殊なものでないと困るのだが)とか、まあよしなしごとにしかならんのでやめます。