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深海通信 はてなブログ版

三門優祐のつれづれ翻訳ミステリ。主に新刊の話をしています。そういえば、「アントニイ・バークリー書評集製作委員会」公式ホームページ。

だらだら雑記20140628【マストリード100編】

雑記 翻訳小説

kindleストア徘徊は未だに止まない今日この頃。ノワールの帝王、ジム・トンプスンのペーパーバックが八月に一斉復刊とかで、未訳の入手困難作品がついでにkindle化されないかなあ、とか祈っています。

昨年末から「マストリード100」って奴が熱い。杉江松恋さんの『海外ミステリーマストリード100』、千街晶之さんの『国内ミステリーマストリード100』(いずれも日本経済新聞出版社・日経文芸文庫刊)、ともに読書意欲をビンビン高ぶらせる好セレクトで面白い、というのは衆目の一致するところであろう。

英米にはこういう紹介本ないのかなー、と深く静かに潜航したところ……おおありましたありました。Nick Rennison & Richard Shephard 100 Must-read Crime Novels。巻頭言曰く、"buff"(「マニア」の謂い)になりたい初心者、ジャンル読書の幅を広げたい人向けのセレクトってことらしい。第二次大戦前後までのミステリの歴史を大まかに辿った序文も熱い。なかなか面白いですよ。


100 Must-read Crime Novels (Bloomsbury Good Reading Guides)

100 Must-read Crime Novels (Bloomsbury Good Reading Guides)

具体的にどんな本取り上げてるのよ、というのは気になるところだと思うので、ざっと列挙しちゃいます。とはいえ、目次も索引もないので、結構面倒だけど……あと、原書では作家名順なんだけど、ちと分かりにくいので、年代順に並べ替えちゃいます。

エドガー・アラン・ポー『謎と想像力の物語』
ウィルキー・コリンズ『月長石』創元推理文庫
ファーガス・ヒューム『二輪馬車の秘密』扶桑社文庫
アーサー・コナン・ドイル『四つの署名』河出文庫
アーサー・コナン・ドイルシャーロック・ホームズの思い出』河出文庫
ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』創元推理文庫
G・K・チェスタトン『ブラウン神父の無心』ちくま文庫
E・C・ベントリー『トレント最後の事件』創元推理文庫
アガサ・クリスティーアクロイド殺し』ハヤカワ・ミステリ文庫
ダシール・ハメット『ガラスの鍵』光文社古典新訳文庫
フランシス・アイルズ『殺意』創元推理文庫
ポール・ケイン『裏切りの街』河出文庫
ドロシー・L・セイヤーズ『ナイン・テイラーズ』創元推理文庫
ジョン・ディクスン・カー『三つの棺』ハヤカワ・ミステリ文庫
レックス・スタウト『腰ぬけ連盟』ハヤカワ・ミステリ文庫
ジェイムズ・M・ケイン『殺人保険』新潮文庫
マイクル・イネス『ハムレット、復讐せよ』国書刊行会
キャメロン・マケイブ『編集室の床に落ちた顔』国書刊行会
グラディス・ミッチェル『Come Away, Death(未訳)』
ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』ハヤカワ・ミステリ文庫
エリック・アンブラー『ディミトリオスの棺』創元推理文庫
レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』ハヤカワ・ミステリ文庫
ジェイムズ・ハドリー・チェイス『ミス・ブランディッシの蘭』創元推理文庫
レイモンド・チャンドラー『さようなら、愛しい人』ハヤカワ・ミステリ文庫
コーネル・ウールリッチ黒衣の花嫁』ハヤカワ・ミステリ文庫
ヴェラ・キャスパリ『ローラ殺人事件』ハヤカワ・ミステリ
ジョン・フランクリン・バーディン『死を呼ぶペルシュロン』晶文社ミステリ
エドマンド・クリスピン『消えた玩具屋』ハヤカワ・ミステリ文庫
デイヴィッド・グーディス『Dark Passage(未訳)』
フレドリック・ブラウン『シカゴ・ブルース』創元推理文庫
ジョセフィン・テイ『フランチャイズ事件』ハヤカワ・ミステリ
シリル・ヘアー『風の吹く時』ハヤカワ・ミステリ
ロス・マクドナルド『動く標的』創元推理文庫
アガサ・クリスティー『予告殺人』ハヤカワ・ミステリ文庫
マイクル・ギルバート『スモールボーン氏は不在』小学館ミステリー
マージェリー・アリンガム『霧の中の虎』ハヤカワ・ミステリ
ミッキー・スピレーン『燃える接吻』ハヤカワ・ミステリ文庫
ジム・トンプスン『俺のなかの殺し屋』扶桑社ミステリー
パトリシア・ハイスミスリプリー河出文庫
マーガレット・ミラー『狙った獣』創元推理文庫
E・S・ガードナー『怯えるタイピスト』ハヤカワ・ミステリ文庫
チェスター・ハイムズ『イマベルへの愛』ハヤカワ・ミステリ
ナイオ・マーシュ『道化の死』国書刊行会
ディック・フランシス『大穴』ハヤカワ・ミステリ文庫
リチャード・スターク『悪党パーカー/人狩り』ハヤカワ・ミステリ文庫
チャールズ・ウィリアムズ『絶海の訪問者』扶桑社ミステリー
ジョン・D・マクドナルド『濃紺のさよなら』ハヤカワ・ミステリ文庫
ジョルジュ・シムノン『メグレ罠を掛ける』ハヤカワ・ミステリ文庫
ジョゼフ・ハンセン『闇に消える』ハヤカワ・ミステリ
ロス・トーマス『The Fools in Town Are On Our Side(未訳)』
ジョージ・V・ヒギンズ『エディ・コイルの友人たち』ハヤカワ文庫NV
エド・マクベイン『サディーが死んだ時』ハヤカワ・ミステリ文庫
K・C・コンスタンティン『The Man Who Liked to Look at Himself(未訳)』
ロバート・B・パーカー『誘拐』ハヤカワ・ミステリ文庫
エリザベス・ピーターズ『砂州にひそむワニ』原書房
ジュリアン・シモンズ『A Three Pipe Problem(未訳)』
ジョセフ・ウォンボー『クワイヤボーイズ』ハヤカワ・ノヴェルズ
スチュアート・M・カミンスキー『虹の彼方の殺人』文春文庫
ジェイムズ・クラムリー『さらば甘き口づけ』ハヤカワ・ミステリ文庫
ジョー・ゴアズ『目撃者失踪』角川文庫
エリス・ピーターズ『死体が多すぎる』光文社文庫
コリン・デクスター『ジェリコ街の女』ハヤカワ・ミステリ文庫
トマス・ハリスレッド・ドラゴン』ハヤカワ文庫NV
サラ・パレツキーサマータイム・ブルース』ハヤカワ・ミステリ文庫
エルモア・レナード『ラブラバ』ハヤカワ・ミステリ文庫
マイケル・マローン『無慈悲な季節』ハヤカワ・ノヴェルズ
デレク・レイモンド『The Devil's Home on Leave(未訳)』
チャールズ・ウィルフォード『マイアミ・ブルース』扶桑社ミステリー
ルース・レンデル『無慈悲な鴉』ハヤカワ・ミステリ
ローレンス・ブロック『聖なる酒場への挽歌』二見文庫
スー・グラフトン『アリバイのA』ハヤカワ・ミステリ文庫
カール・ハイアセン『殺意のシーズン』扶桑社ミステリー
P・D・ジェイムズ『死の味』ハヤカワ・ミステリ文庫
ダニエル・ウッドレル『白昼の抗争』ハヤカワ・ミステリ文庫
ジェイムズ・リー・バーク『ネオン・レイン』角川文庫
ロバート・クレイス『モンキーズ・レインコート』新潮文庫
ジェイムズ・エルロイブラック・ダリア』文春文庫
ジェイムズ・W・ホール『まぶしい陽の下で』ハヤカワ・ミステリ文庫
バーバラ・ヴァイン『運命の倒置法』角川文庫
ローレン・D・エスルマン『ダウンリヴァー』ハヤカワ・ミステリ
トニイ・ヒラーマン『時を盗む者』ミステリアス・プレス文庫
マヌエル・バスケス・モンタルバン『中央委員会殺人事件』西和書林
ウォルター・モズリー『ブルー・ドレスの女』ハヤカワ・ミステリ文庫
パトリシア・コーンウェル『検死官』講談社文庫
スティーヴン・セイラー『Roman Blood(未訳)』
マイクル・コナリー『ナイト・ホークス』扶桑社ミステリー
ジョージ・P・ペレケーノス『硝煙に消える』ハヤカワ・ミステリ文庫
ミネット・ウォルターズ『氷の家』創元推理文庫
ドナ・レオン『異国に死す』文春文庫
マイクル・ディブディン『水都に消ゆ』ミステリアス・プレス文庫
G・M・フォード『手負いの森』ハヤカワ・ミステリ文庫
イアン・ランキン『青と黒』ハヤカワ・ミステリ文庫
クレイグ・ホールデン『夜が終わる場所』扶桑社ミステリー
ヘニング・マンケル『目くらましの道』創元推理文庫
ピーター・ロビンスン『渇いた季節』講談社文庫
ジョー・R・ランズデール『ボトムズ』ハヤカワ・ミステリ文庫
ハーラン・コーベン『唇を閉ざせ』講談社文庫
ロバート・フェリーニョ『Flinch(未訳)』
デニス・レヘインミスティック・リバー』ハヤカワ・ミステリ文庫
レジナルド・ヒル『死者との対話』ハヤカワ・ミステリ

未訳の作品もいくつもありますが、9割がた翻訳されているのは翻訳大国の面目躍如、と言っていいでしょう。
古典中の古典から30年代の謎解き重視型、そしてハードボイルド、サイコサスペンス、クライムノベルとバランスよく収録されているのが特徴。作家はいいけど作品はなんでこれが?というのがいくつか散見されます(ロスマクで『動く標的』とか)が、レビューまで読むと一応ロジックを通しているので納得できます。シリーズ第一作を入れるか、ざっくり外してノンシリーズにするか、あるいはこねくり回して良作をブチ込むかという感じですね。個人的には70年代以降がしっかりしているのも嬉しい。

あちらはPBで入手できなくてもkindleなんかの電書がしっかりしていますから、この辺の大御所クラスだと品切れが少ない(言うて揃ってきたのはここ数年ですが)というのも大きいのかな。ヒラーマンとかディブディンとか、日本だとあからさまに「玄人好み」になってしまっている作家が、きちんと「一つ上の読者」用の階梯の一段になっているのはいいなあ、と思います。

ふと思ったことですが、作者はイギリス人かなという気がします。英題と米題が違う時に英題を優先的に入れている気がするのですよね。まあ、原題重視主義なのかもしれませんが。その割には翻訳ものは訳題を入れている優柔不断な感じ、嫌いじゃありません。

この辺を読んで、みなさんも「一つ上の読者」を目指してみてはいかがでしょうか。
……と、そういえばこのシリーズ、SFもあるんですよ。興味のある向きはぜひ検索してみてください。