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深海通信 はてなブログ版

三門優祐のつれづれ翻訳ミステリ。主に新刊の話をしています。そういえば、「アントニイ・バークリー書評集製作委員会」公式ホームページ。

だらだら雑記20130828【kindleストア徘徊編】

ここもと、仕事の合間に amazonkindleストアを徘徊している。
日本語の新刊書やコミックには目もくれずひたすら洋書の一覧を眺めているのだが、最近気づいたことがある。

kindleストアって、けっこうクラシックミステリを置いているんじゃないか?」
=「英米の出版社はクラシックミステリを比較的熱心に電書化しているのではないか?」

この現象によって、ことによれば未訳本絶版本が1000円程度で買える(ただし英語で読まなければならんのだが……)。これはなんとも画期的である。
10年15年前に中古の洋書を買いあさるのがどれだけ大変だったか、当時の人のweb日記を読むと感慨深いものがありますしね。
さらに、個人的には、「速さ」と「確実性の高さ」。これも嬉しい。何度かペーパーバックを買った経験はあるが、なかなか配送されない上に、「注文を受けたあとで配送不可になってキャンセル」という事態も少なくないのだ。だが、kindleならとにかく一瞬で買える。絶版が原則ない(配信停止はあるっぽいが)ので、欲しいものリストに放り込んでおいてしばらくしたら買う、というのもOK。いや、便利な世の中になったものだ(嘆息

今回は、個人的な備忘も兼ねて、実際どういう本が電書化されているのか、簡単に紹介したいと思う。

まずは超有名な出版社から。

Mysterious Press

ミステリー専門出版社ミステリアス・プレスは90年代に早川とタッグを組んだりしたこともあって、日本での知名度もまあまあという感じですが、ここ数年で電書ビジネスにも乗り出しています。どういう系列で繋がっているのかよく分からないけれど、OPEN ROAD というサイト(http://www.openroadmedia.com/)で、ミステリアス・プレスの本を売っています。
今月の新刊にメアリ・ロバーツ・ラインハートが13冊も入っている! 感動モノです。ジェイムズ・M・ケインとかウィリアム・G・タプリー(これはクラシックじゃないけど)とかもどかどか復刻している。
やや遡って、今年に入ってからの刊行物を見ていくと、ドナルド・E・ウェストレイク(タッカー・コウ名義含む)、スチュアート・パーマー(!)、スチュアート・M・カミンスキー、エラリー・クイーン、シャーロット・アームストロングなどなど、色々出してます。パーマーがほぼ全作入っているのに比べるとクイーンはまだまだ少ない(そもそもクイーンは現役本がほとんどない)のはアレですが、今後も頑張って欲しいですね。
ちなみに個人的要注目はクリスチアナ・ブランドが別名義で発表したロマンス小説。ミステリ色あるのかなあ。気になるなあ。

Harper/Collins

こちらもなんとなく名前だけは知っている有名出版社。特設サイトとかはないので、適当検索の結果だけお知らせすると……おおすごい。ナイオ・マーシュが全作品(自伝、死後編集の短編集含む)が電子化されています。値段を抑えた三冊組セット(kindleだと置き場所をとらないので単純に値下げだけ)も順次刊行されています。論創社や新樹社が予告しながらまだ出していない本はここから読みましょう。Death and the Dancing Footmanとかね。

Random House

そしてランダムハウス。武田ランダムハウスが無くなっちゃったのは残念でしたが、御本家は元気。主流文学もありながら、amazon新着にアーナルデュル・インドリダソンの英訳版やピンチョンの新作が上がってたりするのが、さすがという感じです。クラシックミステリもそこそこ入っていますよ。
まず、(まだ近刊未定扱いですが)グラディス・ミッチェルが今年の12月に一挙に電子化されますね……うちの書棚で、ランダムハウス版で何冊か待機してるんですけど。マージョリー・アリンガムも全作入ってますね……うちの書棚で(ry。あ、クリスピンもほぼすべてあります。


と、ここまで大出版社を三つ紹介したが、この電書化の波はむしろミステリ専門の小出版社にも有利に働いているのかもしれません。適当に拾っただけで結構ありますよ。

The Murder Room(http://www.themurderroom.com/)

専門出版社の中でも、サイトを見た限りでは割に手広くやっているようなのがこちら。青が捜査もの、紫がノワール、緑がスリラーという種類分けらしい。
最近出たものを見ていくと、ジョーン・フレミング(CWAのダガーを何度か獲っている作家)の長編が一通り復刻されているらしい(緑)。ドロシー・ユーナックも復刻した(青)。ハドリー・チェイスも順次進行中(紫)。マイケル・アンダーウッドとかジェフリー・ハウスホールドとか渋いな。
クラシックミステリに限って言うと、ジョナサン・ラティマー(紫)、アントニイ・ギルバート(青)、ロナルド・A・ノックス(青)などなど。退屈派(Humdrum)の巨匠、JJコニントンも数作復刻。カー(クイーン同様現役本はほとんどない)も数作出てるけど『死時計』やら『死人を起こす』やら『雷鳴の中でも』やら、どうにも冴えないタイトルが多い。

Langtail Press(http://www.langtailpress.com/)

電書版とは言えそっけないにもほどがある表紙の会社。アントニイ・バークリー(未訳作あります!)、エリザベス・フェラーズ辺りが狙いどころか。種類はそれほど多くなく、また最近は追加されている形跡がないため、これはもしかすると夜逃げか……まあ、電書データは残るようなのでだいたい大丈夫なんだけれど。

House of Stratus(http://www.houseofstratus.com/)

個人的には非常にお世話になっている出版社。マイクル・イネス全作品電書化とは半端じゃありません。ジョン・クリ―シーを山ほど抱え込んでいたり、オースティン・フリーマンを未訳作含め全作品揃えていたりして侮れない。マイケル・ギルバートほぼ全長編とか、懐かしの『トレント最後の事件』(E・Cベントリー)とか、結構いろいろあります。

Crippen & Landru(http://www.crippenlandru.com/)

クラシックファン垂涎の激レア短編集を復刻し続けている地方の小出版社。どうしても欲しいけど、生年から出遅れた悲しさで、買えない翻通です。kindle化はしないのかなあと思っていた矢先、今度の新刊はkindle版のみ! エリザベス・フェラーズの短編集らしいです。みんなでkindle版を買って、古い本も電子化してもらえるように祈りましょう。

Prologue Books(http://www.prologuebooks.com/)

今回紹介する中で、個人的にはもっとも戦慄すべきと考える出版社。
50年代から60年代の「安っぽいクライムノベル」をすべて300円以下で販売しています。ハリー・スティーヴン・キーラーが一冊300円で読み捨てられる世界……それって最高じゃね? ほか、いくらでもありますので、興味のある向きは一度検索を。

ということで大3小5で計8つの出版社を紹介いたしました。各社今度とも頑張って欲しいですねー。

ちなみに探すときは、amazon検索エンジンに「作者名」を放り込めばだいたい大丈夫です。
それではみなさん、良い積読を!

三門優祐