深海通信 はてなブログ版

三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

翻訳小説

第六回:シーリア・フレムリン『夜明け前の時』(創元推理文庫)

○可愛いお婆ちゃん?姫: 始めましょう。そう言えば、フレムリンは2009年に亡くなったのよね。1914年生なので、亡くなった時は95歳。大往生といっていいんじゃないかしら。咲: 訃報が流れた時に、ネットで彼女の写真を見たんだけど、すごく可愛いお婆ちゃん…

第五回:エド・レイシイ『ゆがめられた昨日』(ハヤカワ・ミステリ文庫)+スタンリイ・エリン『第八の地獄』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

○先週お休みでしたけど咲: 言い訳なしで始めます。今回は先週分も含めて二本立てで行くよ。姫: あくまでも週一本の形式は崩さない、とそういう風に考えているのね。咲: どうもそうらしい。これが吉と出るか凶と出るか。姫: では早速。一つ目の『ゆがめら…

第四回:シャーロット・アームストロング『毒薬の小壜』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

○まずはあらすじを咲: 始めます。姫: みるみる無愛想になっているわね。新規のお客さんが非常に入りにくいと思うのだけれど、その点についてのご意見は?咲: 新規のお客さんってなんです?姫: 切り替えて、今回の対象作品『毒薬の小壜』(1956)のあらす…

第三回:マーガレット・ミラー『狙った獣』(創元推理文庫)

○あらすじから始めますが……姫: 始めまーす。 咲: 今回の対象作品はマーガレット・ミラー『狙った獣』(1954)です。僕はこの作品に限らずミラーという作家が非常に好きななので、今回の主導権は逆に姫川さんにゆだねてみようと思います。ちなみに姫川さん…

第二回:レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

○能書きは抜きにしようって言ったじゃないですか咲: 今回我々は新宿のバー的施設にやってきております。 姫: ギムレットには早すぎるね。 咲: 別に早くないですね、8時過ぎだから。それが言いたかっただけだよね。 姫: 時に咲口君、私の出した条件はクリ…

第一回:シャーロット・ジェイ『死の月』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

○ごあいさつ 三門優祐でございます。普段から当ブログをご覧いただいている皆様、ありがとうございます。ブログ開設から数カ月経ち、主催の逃避など諸々の都合で更新が遅れる時もありますが、ボルガ博士、お許しください! さて、私三門も連載っぽいような、…

マージェリー・アリンガム『霧の中の虎』再読に寄せて

執筆:TSATOI 「ただの脅迫かもしれないよ」タクシーの中の男は明かるい調子で言った。 こうして、マージェリー・アリンガム『霧の中の虎』(1952)は始まる。巧い書き出しである。のっけから「脅迫」などという単語が出てくるのにもぎょっとするが、「ただ…

三門さんのだらだら雑記20120523

気が付いたら一カ月が経過していたとかよくあることである。ネタがない時はネタになることをしろ、ということで読めない洋書の文字だけ追ってみた。『居心地の悪い部屋』収録の二作品で、一気に注目が高まっているブライアン・エヴンソンの Altmann's Tongue…

三門さんのだらだら雑記20120423

ヒル原稿難航中。アリンガムは校正が難航中。 - いい加減どの号があるのか分からないミステリマガジンを一挙に整理。全部で150冊ほどあった。一番古いのが73年の6月号だが、ほとんどはここ10年程の刊行。多いんだか少ないんだかよく分からん。特に古本で買っ…

三門さんのだらだら雑記20120417

どうでもいい新刊書含め書籍を50冊ほど処分したら2000円になったので、古本屋に買い物に出かけることにした。金があれば本になる。これは避けがたく、仕方のないことである。本日は早稲田の丸三文庫へ。ひげ眼鏡で、比較的若い店長が一人でやってる割に新し…

三門さんのだらだら雑記20120416

まとまった書評を書こう書こうと思いながら、いまひとつ時間が取れない、という言い訳に走りたくなる日々。まとまらない駄文を流して更新に代えることにします。真面目な書評も進行中なので、それはもう少々お待ち下さい。 - 私は特に用もないのにブックオフ…

【第15便】深海春のカー祭り 第一弾 「『ユダの窓』所感」

昨日更新して今日も更新する、そんな速度に慄然としますね。ここは本当に深海ですか? 「深海春のカー祭り」第一弾は、以前「『誰の死体?』再読レビュー」を投稿していただいたTSATOさんによる『ユダの窓』レビューです。今回も、明解な分析に裏打ちされた…

【第14便】深海春のカー祭り 概要

2012年3月、奴が帰ってきた。 クラシックミステリ界の愛され一番星、ジョン・ディクスン・カー(またの名をカーター・ディクスン、あるいはカー・ディクスン)の作品が、次々新訳されることを誰が予測しただろう。3月に『蝋人形館の殺人』、5月に『皇帝の嗅…

【第13便】2012年2月新刊レビュー(翻訳編)

続いて翻訳編。 ドン・ウィンズロウ『野蛮なやつら』(角川文庫) 野蛮なやつら (角川文庫)作者: ドン・ウィンズロウ,東江一紀出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/02/25メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 35回この商品を含…

【第11便】「略称孤独の本読み」第三回:パトリシア・ハイスミス

不肖私はパトリシア・ハイスミスという作家が大好きなんで、このブログの読者である皆さんにぜひオススメしたいと思って、ワープロソフトを立ち上げては見たが、しかしながら彼女は、よくよく考えてみなくても広く一般にアピールするような作家ではないとい…

【第10便】2012年1月新刊レビュー(翻訳編)

お次は翻訳編です。今月も力作多数。 アルジャーノン・H・ブラックウッド『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』(光文社古典新訳文庫) 秘書綺譚―ブラックウッド幻想怪奇傑作集 (光文社古典新訳文庫)作者: アルジャーノンブラックウッド,Algernon Henry…

【第8便】「略称孤独の本読み」第二回:クリスチアナ・ブランド

第二回:誰が被害者を殺そうと構うものか。 今回はイギリスの女性作家、クリスチアナ・ブランドを取り上げる。1941年、『ハイヒールの死』でデビューした彼女は、デビューそのものは遅かったが、黄金時代の巨匠である、アガサ・クリスティー、エラリイ・クイ…

【第7便】2011年12月新刊レビュー(翻訳編)

続いて翻訳小説編をば。 スコット・ウエスターフェルド『リヴァイアサン クジラと蒸気機関』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: スコット・ウエスターフェルド,小林美幸出版社/メーカー: 早川…

【第5便】ゲスト投稿席(第一回・前半)

ドロシー・L・セイヤーズ『誰の死体?』再読に寄せて執筆:TSATOⅠ ドロシー・L・セイヤーズを評するのによく聞く言葉で「本国英国ではクリスティと並び称されている(ほどの)作家」というものがある。とはいえ彼女の作品は「本格ミステリ」という日本語で…

【第5便】ゲスト投稿席(第一回・後半)

Ⅱ. 『誰の死体?』はデビュー作ではあるものの、後の作品を思わせる要素が多く見られるのも特徴だ。セイヤーズの作風は一般的に前期と後期に分けられて考えられているが、デビュー作の時点ですでに、後期作で見られるようなDetective Storyそのものへの批判…

【第4便】「一人退屈な夜半には、酒を呷って本を読む」第一回:マイケル・スレイド 後編

全作品解題をやってもいいんですが、みるみるスペースが埋まるので一作だけキャッチーなのを選びます。髑髏島の惨劇 (文春文庫)作者: マイケルスレイド,Michael Slade,夏来健次出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2002/10メディア: 文庫 クリック: 18回この商…

【第4便】「一人退屈な夜半には、酒を呷って本を読む」第一回:マイケル・スレイド 前編

第一回:マイケル・スレイドを、読むな! 最近若い人と話をしていて、「翻訳ミステリって何から読んだらいいか分からない」という言葉を耳にする機会が多い。そういう人は真面目だなー、と思う。いや、自分がその辺にあった本を適当に読んでいっただけで、系…

【第3便】2011年11月新刊レビュー(翻訳編)

国内編の(その1)に続いて(その2)は翻訳編です。あれがない、これがないと若干の不満も残りますが、とりあえず今回はこんなところで。 ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q-キジ殺し-』(HPM)特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 185…