深海通信 はてなブログ版

三門優祐のつれづれ社畜読書日記(悪化)

ゲスト投稿席

「殺しにいたるメモ」に関するメモ

執筆:TSATOI 代表作『野獣死すべし』で、前半を殺人を企てている男の手記、後半をナイジェル・ストレンジウェイズによる捜査と二つに分けた斬新な構成としていることからもわかる通り、犯人の心理描写へのこだわりは、ニコラス・ブレイクの作品では重要な要…

マージェリー・アリンガム『霧の中の虎』再読に寄せて

執筆:TSATOI 「ただの脅迫かもしれないよ」タクシーの中の男は明かるい調子で言った。 こうして、マージェリー・アリンガム『霧の中の虎』(1952)は始まる。巧い書き出しである。のっけから「脅迫」などという単語が出てくるのにもぎょっとするが、「ただ…

【第5便】ゲスト投稿席(第一回・前半)

ドロシー・L・セイヤーズ『誰の死体?』再読に寄せて執筆:TSATOⅠ ドロシー・L・セイヤーズを評するのによく聞く言葉で「本国英国ではクリスティと並び称されている(ほどの)作家」というものがある。とはいえ彼女の作品は「本格ミステリ」という日本語で…

【第5便】ゲスト投稿席(第一回・後半)

Ⅱ. 『誰の死体?』はデビュー作ではあるものの、後の作品を思わせる要素が多く見られるのも特徴だ。セイヤーズの作風は一般的に前期と後期に分けられて考えられているが、デビュー作の時点ですでに、後期作で見られるようなDetective Storyそのものへの批判…